「憂鬱なる感傷といはむ流れゆく 音にこもらふ深きしづけさ」

ボンに生家がある、ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの音楽を聞いて
作られたという詩歌の色紙が実家に掛けてあった。

ドイツ人の国民病の1つに意気消沈して生きる力を失う鬱病がある。気分が憂鬱のみならず、異常疲労感、自律神経失調症的な不快な身体の症状(センターラインの痛み)が伴うケースが多い。

緯度が高いドイツでは、11月から12月の冬至(クリスマスの頃)にかけて、太陽光線が毎日弱くなり、また日が短くなり、低く垂れ下がる暗く重い空と濃い霧や雪の日が何日間も続いたりする。湿度が高くなり零下の日も多い。

朝なのか昼なのか、夕刻なのか判断が付かない様な暗い日が続くこの頃、ドイツでは1年で一番自殺が多い季節となる。2番目に多いのが5月だという。
昨年のクリスマス時期に、知人の高齢の医師が自殺をされて、人も羨む生活環境だったから、皆驚いた。

以前よりは少なくなったとは言うものの、ドイツでは47分に1人、年間11,200人が自殺し、女性よりも男性が倍以上も多く、旧西側より旧東側が多い統計が現在ある。この数字は、この20年間横ばいとなっている。

日本の自殺がここ数年、年間3万人というから、これまた異常な事態である。

この季節、街や地下鉄などでドイツ人をよく観察すると、確かにデプレッシブな暗い目をした人が多いのに気が付く。アンケート調査では、ドイツ人の69%が、クリスマス時期を家ではなく、太陽の多い、エジプトや北部アフリカ、ギリシャ、イタリア、スペインなど地中海で過ごしたり、スキー場で過ごしたいと答え、現に多くの人達が旅立っている。

太陽の替わりに室内で蝋燭の光りや、暖炉の美しい火が人々を助けている。
人類の10%の人達が青い目だそうだが、この青い目が一番快適に感じる光りが、蝋燭と薪を燃やす光りだとも言う。ヨーロッパのホテルが日本人には薄暗く感じられるのは、目の色が異なるからだ。

稀に、晴れて青空が出たりすると、人々は外に出かけて太陽光を浴びる。
こんな季節に出会う青空は、まるで神様からの贈り物のように感じられる。

ミュンヘンでの薬草学会でも発表されたが、どの病気の為にも薬草が育っていると言われ、副作用が色々とある化学薬品より自然の薬草成分が人を大きく安全に助ける事がある。

重点が置かれている研究の一つが、3cm程の小さな黄金色の花をつける西洋オトギリソウ・ヒペリクム ペルフォラの赤いオイルである。現在初期と軽い鬱病には大変有効とされ、臨床試験も多く行われ、メンタルサプリとして精神科医も処方している。世界の標準的な医学情報のコクラン・データーベースにも、西洋オトギリソウのエビデンスが紹介されている。

葉酸やビタミンC、B群も、ストレスが多い鬱病の80%の人に不足している。

西洋オトギリソウは、ドイツ語では、ヨハニスクラウト、英語ではセントジョンズワートと言う。2000年も前から、薬草として止血剤、抗炎症剤に使われ、十字軍の兵士の傷の手当てにも使われていた。
修道院の薬草園には、欠かせない薬草植物でもあった。

主要成分は、ヒペリン、ポリフェノール、ヘペロサイド、タンニンなどである。
(日本のサプリ市場ではまがい物も多いので、品質に注意が必要で、また他の医薬品との併用には専門家に相談するのが良い)

日本では、オトギリソウの名前は、鷹の傷を治す家秘伝の薬草を弟が他人に教えてしまい、激怒した兄晴頼はその弟を刀で斬ったので、(その時、飛び散った血液が葉に黒いシミとなって残ったとも言われる)そこから弟切草の名が出た、と江戸時代の百科辞典『倭漢三才図会』 に記されている。

以前、2人の子供を連れてドイツ人の奥さんが家を出てしまい、離婚問題と経済問題で見るも哀れな程苦しんでいた知人に、このオトギリソウの赤いオイルカプセルを1箱プレゼントした事がある。数ヵ月後、あの時オトギリソウを呑んでいなかったら、僕は自殺をしていたと伝えられた。昨年、この2人は同じ相手と再婚をした。あぁ、人生。

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