04.08.2009 am Dienstag
author : 永冶ベックマン啓子 Keiko Nagaya Beckmann
第一次世界大戦の後、ドイツは膨大な戦争責任の賠償金の為経済は最悪となった。ドイツの科学者達は研究費もなく生活さえも困窮を極め、世界の学会からも追い出され、研究者も少ない悲惨な状況となっていた。
当時、ドイツの学問研究は各分野で、医学、化学、物理、農業、音楽等世界最高水準に達し、多くの教授達はユダヤ系ドイツ人が占めていた。
星製薬社長星一は、アメリカでの苦学した留学から帰国後、大成功していた。英国留学から戻った友達や、在日ドイツ大使ゾルフの親友後藤新平からいかに酷い状況かを聞いた。大変心を痛め、「ドイツの化学技術がダメになれば、ヨーロッパが崩壊してしまう」と謝恩の思いで、遂に私費で援助を始めた。最期は日本の政争に巻き込まれ、経営悪化するも約束を果す為に自宅を抵当に借金までし無条件で何の制約もないと言う援助を、現在のドイツ学術振興会の前身の組織へ7年間に渡り送金を続けた。現在のお金にすれば10億円以上、ドイツに日本が学ばせて頂いたお礼でもあった。
他にもベルリン大学だけで日本からの公的援助の申し出が4件もあり、これらは「日本基金」とよばれた。また個人的援助は数知れない程多く、何と97の学問的課題で研究グループが作られた。
明治維新以降、日本政府は実に国家予算の3分の1を教育関係に割り当て、多数の留学生を欧州に送り、(滝廉太郎や森林太郎の名前はよく知られている)また多数の外国人教師が高額の給料で日本へ招かれた。
星基金は、「星・ハーバー委員会」とされベルリン大学化学教授フリッツ・ハーバーにより運営された。ハーバーはドイツ系ユダヤ人で、初期は化学兵器の父と呼ばれた。空中窒素固定法を確立、アンモニア合成で現在ハーバ―・ボッシュ法で知られドイツ化学工業の父と呼ばれ、1918年ノーベル化学賞を受賞している。IGファルベンという化学会社を創立、戦後はヘキスト、バイエル、BASFに分かれたが、世界的な化学会社であり、ハーバーの業績なしでは存在し得なかったであろう。
友人アルベルト・アインシュタインの薦めもあり、1924年星の全面的な招待で
ハーバーは日本を訪問した。そして「日本人は模倣と物真似が上手い民族と言う人がいるが、私にはとうていそうは思えない。日本は間も無く強大な工業国になるだろう」とドイツの友人に手紙で伝えている。
ハーバーは、感謝の印にいくつかの化学の特許を星に贈与しようとしたが、星はそれを、お金で買うべきものであるとして受け取らなかった。
1926年ベルリンに日本文化研究所が設立され、初代所長のハーバーは、星基金でオーストリア皇帝フランツ1世の遺品の中から、シーボルトの「ニッポン」全巻を購入する事が出来た。
1933年ヒトラーが政権をとると、ベルリン大学から追放され1934年スイスのバーゼルで寂しく亡くなる。星が日本へ来いと出した手紙は、亡くなってから数日後に遺族に届いた。ナチスは最初、黄禍の元凶とした日本人ヤパーナーも
ユーデ(ユダヤ人)も同じ“J”で始まる非アーリア系で遙か下位と見なし、日本基金も意図的に忘却された。
日本基金の奨学金で生活研究した人達では、リヒャルト・ヴィルシュテッター(1915年、ノーベル化学賞)、マックス・プランク(1918年、ノーベル物理学賞)、オット―・ハーン(1944年、ノーベル物理学賞)ヴェルナー・ハイゼンベルク(1932年ノーベル物理学賞)を受賞している。
日本基金無くして、今日のドイツの物理や化学は存在出来なかったと断言できるのではないだろうか。
日本人には特に忘れられない名前が、レオ・シラートである。ハンガリー生まれの驚くほど優秀な星基金の奨学生であった。1938年米国に亡命して、原爆製造研究のマンハッタン計画に参加し、重要な役割を果した。ニューヨークで生まれた移民ユダヤ人の子、オッペンハイマーを代表とした研究は成功してしまい、リトルボーイとファットマンが日本に投下された。70人の科学者がルーズベルト大統領に反対するも、科学者の手を離れて、人類の尊厳を保つべき文化、宗教・倫理道徳の基準を離れ、この時から世界は狂気の暗黒時代へと突入した。オッペン・ハイマーは「我は死神なり、世界の破壊者である」と述べた。
戦勝国の非人道性は、一体誰が裁くのであろうか?
ドイツの頭脳集団マックス・プランク研究所本部はミュンヘンにあり、78ヶ所に研究所を持つ。現在日本人の研究者は少なく、実に多くの中国人研究者が来ていて、アジア担当官のドイツ女性博士は中国語を学び話していた。
1985年ワシントンDCから、ベルリン日本文化研究所関係の書類がルール・ボッフム大学に返却された。まだ多くのドイツ人も日本人もこの事を知らない。
この死神に対抗するには日本が死神を立てるしか抑止力がないのが、世界の現実ではないだろうか。大和魂を眠らせ売り渡し次の更なる暗黒時代に入ってもいいというのだろうか? 私はこの屈辱感に耐えられなく戦慄を覚える。
当時、ドイツの学問研究は各分野で、医学、化学、物理、農業、音楽等世界最高水準に達し、多くの教授達はユダヤ系ドイツ人が占めていた。
星製薬社長星一は、アメリカでの苦学した留学から帰国後、大成功していた。英国留学から戻った友達や、在日ドイツ大使ゾルフの親友後藤新平からいかに酷い状況かを聞いた。大変心を痛め、「ドイツの化学技術がダメになれば、ヨーロッパが崩壊してしまう」と謝恩の思いで、遂に私費で援助を始めた。最期は日本の政争に巻き込まれ、経営悪化するも約束を果す為に自宅を抵当に借金までし無条件で何の制約もないと言う援助を、現在のドイツ学術振興会の前身の組織へ7年間に渡り送金を続けた。現在のお金にすれば10億円以上、ドイツに日本が学ばせて頂いたお礼でもあった。
他にもベルリン大学だけで日本からの公的援助の申し出が4件もあり、これらは「日本基金」とよばれた。また個人的援助は数知れない程多く、何と97の学問的課題で研究グループが作られた。
明治維新以降、日本政府は実に国家予算の3分の1を教育関係に割り当て、多数の留学生を欧州に送り、(滝廉太郎や森林太郎の名前はよく知られている)また多数の外国人教師が高額の給料で日本へ招かれた。
星基金は、「星・ハーバー委員会」とされベルリン大学化学教授フリッツ・ハーバーにより運営された。ハーバーはドイツ系ユダヤ人で、初期は化学兵器の父と呼ばれた。空中窒素固定法を確立、アンモニア合成で現在ハーバ―・ボッシュ法で知られドイツ化学工業の父と呼ばれ、1918年ノーベル化学賞を受賞している。IGファルベンという化学会社を創立、戦後はヘキスト、バイエル、BASFに分かれたが、世界的な化学会社であり、ハーバーの業績なしでは存在し得なかったであろう。
友人アルベルト・アインシュタインの薦めもあり、1924年星の全面的な招待で
ハーバーは日本を訪問した。そして「日本人は模倣と物真似が上手い民族と言う人がいるが、私にはとうていそうは思えない。日本は間も無く強大な工業国になるだろう」とドイツの友人に手紙で伝えている。
ハーバーは、感謝の印にいくつかの化学の特許を星に贈与しようとしたが、星はそれを、お金で買うべきものであるとして受け取らなかった。
1926年ベルリンに日本文化研究所が設立され、初代所長のハーバーは、星基金でオーストリア皇帝フランツ1世の遺品の中から、シーボルトの「ニッポン」全巻を購入する事が出来た。
1933年ヒトラーが政権をとると、ベルリン大学から追放され1934年スイスのバーゼルで寂しく亡くなる。星が日本へ来いと出した手紙は、亡くなってから数日後に遺族に届いた。ナチスは最初、黄禍の元凶とした日本人ヤパーナーも
ユーデ(ユダヤ人)も同じ“J”で始まる非アーリア系で遙か下位と見なし、日本基金も意図的に忘却された。
日本基金の奨学金で生活研究した人達では、リヒャルト・ヴィルシュテッター(1915年、ノーベル化学賞)、マックス・プランク(1918年、ノーベル物理学賞)、オット―・ハーン(1944年、ノーベル物理学賞)ヴェルナー・ハイゼンベルク(1932年ノーベル物理学賞)を受賞している。
日本基金無くして、今日のドイツの物理や化学は存在出来なかったと断言できるのではないだろうか。
日本人には特に忘れられない名前が、レオ・シラートである。ハンガリー生まれの驚くほど優秀な星基金の奨学生であった。1938年米国に亡命して、原爆製造研究のマンハッタン計画に参加し、重要な役割を果した。ニューヨークで生まれた移民ユダヤ人の子、オッペンハイマーを代表とした研究は成功してしまい、リトルボーイとファットマンが日本に投下された。70人の科学者がルーズベルト大統領に反対するも、科学者の手を離れて、人類の尊厳を保つべき文化、宗教・倫理道徳の基準を離れ、この時から世界は狂気の暗黒時代へと突入した。オッペン・ハイマーは「我は死神なり、世界の破壊者である」と述べた。
戦勝国の非人道性は、一体誰が裁くのであろうか?
ドイツの頭脳集団マックス・プランク研究所本部はミュンヘンにあり、78ヶ所に研究所を持つ。現在日本人の研究者は少なく、実に多くの中国人研究者が来ていて、アジア担当官のドイツ女性博士は中国語を学び話していた。
1985年ワシントンDCから、ベルリン日本文化研究所関係の書類がルール・ボッフム大学に返却された。まだ多くのドイツ人も日本人もこの事を知らない。
この死神に対抗するには日本が死神を立てるしか抑止力がないのが、世界の現実ではないだろうか。大和魂を眠らせ売り渡し次の更なる暗黒時代に入ってもいいというのだろうか? 私はこの屈辱感に耐えられなく戦慄を覚える。
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