ミュンヘンの中央駅から兵舎の近くの駅まで行くのに、ザルツブルグに近いオーストリアとの国境の町フライラッシングで乗換えがあり、列車で約2時間かかる。
その往復の時間退屈なので、息子は初めて自分のお小遣いと自分の選択でドイツ語版の本を数冊買い読み始めた。その時まであまり読書家ではなかったので、親は驚く。ハインリッヒハラとダライラマの“ チベットに7年間”がとても面白く夢中になって読んだそうだ。この映画は以前家族で見た事がある。
この頃から食事時の家族の会話で、息子が話す事が増えてきたのも大きな変化である。
9ヶ月の間で、10冊程読み、読書の楽しみを発見したようで、読書の習慣は身についたようだ。先日も“中国”と言う分厚い本を購入して読み始めている。

あれ程好きだったコンピューターゲームも殆どしなくなった。これも驚く。
真剣な現実体験をしているから、バーチャルリアリティが色あせて見えるのは、当然の事であろうとは、容易に想像できた。

テレビは兵舎では禁止だが、家でもあまり見なくなる変化が起き、兵舎では5人の仲間で街に飲みに出たり、話をしたりするので、1人で本を読む事はあまりなかったようだ。(ドイツでは、16歳からビールは飲んでも良く、喫煙も16歳から許可されていたが、今は法律が改正され両方ともに18歳に繰り上がった。)

最初から小銃の講義と兵舎から放れた所に撃つ練習場があり、ピストル、機関銃と3ヶ月間で3種類の武器を学んだという。1ヶ月2~3回の割りで9ヶ月間、何時も10kgの荷物を背負い歩いて移動して、訓練したそうだ。
初めての練習の時は、それはとても緊張したそうで、「これで人は殺してはいけない」と複雑な思いがあったそうだ。小さい時から、ピストルが大好きで、父親から本物の空気銃をもらった時は、いつもベッドの横に置いて寝ていた子だった。
機関銃の操作は体重を全部かけるように使い、「体を入れて撃て!」と注意されたが、かなり練習を必要とし難しいそうだ。「射撃は、スポーツにもあるが、狩猟とか、好きな人は警察官になる方法もあるよ。あくまでも自分を、家族を、国を守る為のものであり、所持して気迫をつけて、使わないのが一番良いと思う」と、息子は考えて話していた。
第三週目の木曜日、夕食後、20人の中隊で10kgのリュックザックを背負い、夕刻から真夜中まで、森や林、高原へと訓練に出かけ、森の中で教官から色々な体験談など話を皆真剣に聞いたという。

 敵が森の中に居るかもしれない、と想定すれば、歩く事も足音を立てないように慎重になり、だんだんと薄暗くなり視覚が悪くなってくると、今度は聴覚が徐々に発達し、また臭覚や皮膚感覚まで研ぎ澄まされて鋭くなってくるのを感じたという。夜の暗い森は、危険な感じがして、現代人が失いつつある野生的な本能や直感力も訓練され再び、呼び戻されてくるような感じがしたという。
帰りは、星明りのなかで山の坂道をくだり、兵舎についたのが、真夜中の0;10分、それから靴と銃を急いで磨いてから、寝たのは0;45分、そして
起床は例外なく、4;45分。

連日30℃以上の暑い日が続き、疲労しきって空になったような青白い顔をし、咳をしながら鼻声で憔悴した様子で金曜日の夕刻帰宅した。
食前に、フレッシュジュースを飲ませ、(人参+リンゴ+パイナップル+オリーブのバージンオイル)バランスの取れた食事をだすが、食欲が少ない。

 何だかデプレッシブな様子で息子は次々と話した。、トルコ系ドイツ人の男の子が、「銃でみんなを殺す」とか、神経的に変になり、狂った事を言い出して、山岳隊をやめて家に帰った。”春巻き“と言うあだ名のドイツ国籍を持つ韓国人が、言う事は最初大きかったが、体力があまりなく、かなり仲間に虐められて辞めていった。視力が、左右でかなり異なる子がいて、この子も辞めていった。

高官が定年退職する式典があり、1時間直立不動で立ったが、一人まっ青になり倒れて、救護室に運ばれた。僕は、靴の中で指先を動かしていたから、話を聞いていたら、1時間は直ぐに終わったそうだ。
10kgの荷物と小銃を持ち、7キロメートルほど歩いて近くの岩山に登山した時、1人が呼吸困難になり、本当に苦しそうで泣きそうになった。
僕もその子の荷物を何人かで分けて運んだから、大変だった。
「僕、もしかしたら、選択を間違えたかもしれない、ハードすぎる」とポツリと言った。確かに食欲はないし、こういう時は、メガ ・ニュートリションでサポートするしかないと思い、バンバンと マイクロ栄養素のサプリを飲ませて、「睡眠不足もあるから、早く暑いシャワーをあびて寝なさい!」と、ベッドへ行かせた。                       ( つづく )

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