3 と言う数字は面白い、3日、3週間、3ヶ月、3年、1つのバイオリズム
でもあり、試金石のような数字でもある。3週間目の週末が終わり、睡眠不足も解消し食欲も出てきた。どうやら息子の全身60兆個の細胞が約3日間にバンバンと受け取った栄養素でかなり満足する状態にまで到達する事が出来て、“ナチュラル・ハイ”を感じたようだ。私自身も経験しているが、本も出ている。( ナチュラル・ハイ わたしを越えるわたし 上野圭一 海竜社)

 「お母さんのおかげで、また元気が出てきたよ、ありがとう! 僕は何が何でも最後まで辞めない、絶体続けるから」と新たに強く決意した様子で言った。
また大好物の虎屋の羊羹でお末茶を美味しそうに飲み、実にすがすがしい明るい顔をして日曜日の夕刻家を出て、兵舎に向かった。

 3ヶ月で挫折したら、本人が一番傷つき、一生トラウマになるのではないかとの、心配が私達親にあった。適性検査では衛生班が良いと何回か勧められたし、スポーツで十分鍛えていないし、適性度1の子が殆ど行く山岳隊は無理ではないか、との心配が内心あった。が、これで乗り越えるだろうと思った。

それにしても、いやに頻回に身にしみて感じているように“ありがとう”を言い、素直に感謝をするようになった。「限界まで鍛えるから、覚悟するように」とは、本人のみならず、若いドイツの兵士の親としても、覚悟が必要であった事を私もここで理解した。

机上で学ぶ今までの学校教育とは異なり、人は肉体や精神の限界まで経験させると、今戦争中なんだ、と別次元を想定し考えて行動すると、その前と後では、ヘビが脱皮したように人間が変化して成長出来る気がする。どこを限界とするかは、個人差が大きいが、良識と学問、体験と直感力の問題かもしれない。
日露戦争(1904-1905年)の折には、陸軍の兵士は軍医の栄養学の知識不足で白米を主食とした為、ビタンミンB1の欠乏を主因とし、3万人近い兵士が亡くなったことは良く知られている。また、野生のトウモロコシを主食としていた南米、スペイン、ポルトガル、イタリアでは毎年数万人と言う人達が、ナイアシン・ビタミンB3とトリプトファン(必須アミノ酸)の欠乏のペラグラ病(イタリア語で粗なる皮膚と言う意味)で最後は精神に変調を来たし、狂って亡くなっていく、驚愕する出来事だ。
(現在の日本では、変な事件が毎日のように報道されているが、ペットフードより質の悪い食生活をしていれば、栄養失調となりペラグラ病的な症状を来たしたとしても全然不思議ではない)

人はビタミンが1つでもだんだんと少なくなり、ある日 0=ゼロ になると、死んでしまう。ポックリ病、過労死、スポーツ選手などの突然死なども同
原因と考えられる。症状からみて不足している栄養素のみを与えても、あまり効果なく、他のB群や栄養素を一緒に与えると、相互作用で効果は大きくなる。

ある日お昼近く息子から電話があり、今兵舎の中の保健室にいて、軍医さん(女性)から“Zecken/ マダニ” の予防注射は何回してあるかと、聞かれたけど、と問い合わせがあり、2回しているとかしばらく話をした。
9ヶ月間は、健康保険料は全て国が支払ってくれるが、子供のお金 月額
150ユーロの支払いは、中止となった。

息子と2人だけの時の会話は、誕生時から全て日本語で通しているが、この時軍医さんが息子の会話にとても驚いて、「今一体、あなたは誰と何語で話をしたの?」と聞いてきて、日本語だとわかると、「私日本語が勉強したかったのよ、是非教えて欲しい」としばらく日本の話をしたという。

この時から、「リーダーや上官までがいやに僕の事をジーと見るんだよ」、そして「君本当に日本語が話せるんだって、是非俺にも教えて欲しいよ」と数人から、話しかけられたと言う。同じ部屋の仲間も、日本語を是非覚えたいというので、少し教えたそうだ。日本の事がよく話題になり、みんなスシが食べたいと言っていたそうだ。

 この週末には、「お母さん、僕日本語が話せて本当に嬉しい! ありがとう」と言い、こんな言葉も私は始めて聞いた。同室の子で、元東ドイツのイエナから来ている子が、「ミュンヘンは僕には町が大きすぎて大変だ」と言うので、東京の話をしたとか、チェコの国境近くの田舎から来ている子がいるとか、 仲間の話が増えてきた。少し慣れて余裕が出てきたようだ。
1ヶ月経過し、息子の銀行口座に約400ユーロ軍から、給与が支払われた。
日当、交通手当て、食事をしない分は支払いがなされ、初めての収入である。
少し嬉しそうで、同時に少なくてがっかりでもある顔をしていた。
しかし、今までのお小遣いよりは多い額である。 
16歳で、職業訓練生となる子もこの位の収入となっている。   (つづく)

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