糠蚊(ヌカカ)はハエ目に属し、体長が1ミリから数ミリの小さい昆虫で、糠粒のように小さい蚊と言う意味から日本語では糠蚊と命名されている。

この小さな蚊は、病原体レオウイルス科のブルータングウィルス、ドイツ語ではブラウツンゲ(青い舌)ウイルスを動物に感染させる。
人が刺されても蚊とは異なり、直ぐには痒みが出ず、後にアレルギー症状が出る事が多く、重症な感染例は報告されていない。

現在北ドイツで、このウイルスに感染した1万頭の牛と3万匹の羊が死亡し、また牛が流産したりと、大変深刻で大きな問題が起きている。

潜伏期は5~20日間で、山羊や牛では感染しても症状が出ない場合もあるようだが、有効な治療方法は現在まだ無い。ワクチン注射を牛や羊にするように農家に薦められているが、家畜が注射に驚いて暴れ事故が起きたりもしている。

反芻動物が感染すると、発熱、唾液分泌過剰、顔面浮腫、嚥下障害、鼻汁漏出、呼吸困難を来たし、腫脹や潰瘍が口や鼻の粘膜に出来、舌にチアノーゼが出る所から青舌病と呼ばれる。ものを言えない動物の病は本当に哀れである。
日本では、1974年にウイルスが確認され1994年に牛とか綿羊での発病がある。

ドイツでは気候の温暖化の為か、以前は殆どいなかった蚊が多く発生して、日光浴中に全身を刺される人達が出るなどこの数年各地で新しい被害が出ている。
南方にしかいないはずの毒蜘蛛が見付かったり、その被害も報告されている。
先日36℃まで気温が上がった湿度の高い日に、家の中にまで1匹の蚊が入り、1秒間に600回の不快な振動音を立てて、襲われそうになって驚いた。

炭酸ガスや体温を感知して、メスの蚊は暗闇でも血を求めて襲い掛かる。
蚊には37属3266種類その内2500種が吸血し、病原菌を媒介するのは300種の蚊で約30種類の病気の原因となり、次に危険な虫はダニである。

コガタアカイエカは、日本脳炎の伝染病を媒介し、またマラリア、フィラリア、黄熱病、テング熱、など恐ろしい感染症も蚊が媒介する。
1837年アフリカで発見されたウエストナイルウイルスは、日本脳炎によく似た熱症のアフリカの風土病でやはり蚊がウイルスを媒介している。
2002年、アメリカでこのウイルスに数千人が感染し、その内200人以上の死者を出した。アフリカからの直行便が到着するスイスのチューリッヒ空港近くの住民がマラリアに感染した事が以前あったので、蚊達は飛行機に知らない間に乗りこんで、遠距離を移動している事は間違いなく想像出来る。

ドイツの毒物学者のホルスト ベルヒャー博士は、昆虫の毒の研究では優れて、著書も4冊出ているが、その中に面白い研究がある。

6本足の虫の種族は大変多いが、特殊な口の形をした蚊、アブ、南京虫、蜘蛛、また注射型で針を刺す蜜蜂、ススメバチ、モンスズメ蜂の毒素は、放出投与された量とその毒素の種類が問題となる。

主なる毒素の構成因子は生アミノ(ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン)、ペプチード(スズメバチ、モンスズメバチーキニン、アパミン、メリティン
肥大細胞―非粒状ペプチード)そして酵素(フォスフォリパーゼン、ヒャルロンイダーゼ)である。

簡単に言えば、これらの個々の主なる毒素成分が関係して反応を呼び起こし、痒み、炎症、腫張の局所的な症状があり、また生命に危険を齎すアレルギー
(過敏症・アナフィラキシー、ショック、全身浮腫、気管支喘息)などが毒素に関係して現れる。

昆虫が刺し皮膚に放出される毒素は、化学的に不安定な構造で熱に大変弱い物である。虫に刺されたり噛まれた皮膚組織の局所に50~60℃の熱を25秒間以内(あるいは時には70℃の熱で)与えると、生アミン、ペプチード、酵素を分解破壊また害を及ぼす力を失うように毒素構成を変えてしまう事が出来る。

従って、痛み、刺激的な掻痒感、紅班、水泡形成、炎症を軽減させるか、または抑える事ができる。毒物の中のミル成分が、局所麻酔の役割を果しているので、この温度でも痛みの刺激は主観的に少ない。

このメカニズムを利用して、温熱で毒素を分解解毒できる小さな可愛い医療器具が薬局に販売されているが、賢い方法だと感心する。
そういえば、ガン細胞は42,5℃で死滅するが、体は温めるに限る。
(ミュンヘン在住)ながやベックマンけいこ

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