8月は毎日比較的良い天候が続いていた。息子の話によると、一番落ち着かないのは、朝食後1時間部屋で待機の時間がある時だという。 1日中、起床時から就寝前の10時まで、ノックもしないで、ドン と急に扉を開けて、誰が入って来るかわからないという。

 上下関係は大変厳しいという。食事も隊長達が食べ終わる前に、兵士は食べ終わっているように、と最初言われたそうだ。いつも時間がなく忙しいという。
隊長が入室すると、全員起立、緊張して敬礼、係りが、決められたスタイルで挨拶、レポートをするが、繰り返して練習しているうちに、みんな様になり姿勢も良く、毎日練習するから上手くなってきた。(最近、日本の学生研修ツアーをよく見ていると、姿勢が悪く挨拶もきちんと出来ない子がいるのに気が付く。)

ある日、用事があって息子は隣の部屋へ行ったそうだ。小さくノックしたが、扉を開けて中に入ると、みんな聞こえなかったようで、隊長が来たかと思い全員起立して、敬礼して、「あっなぁ~んだ、君か、隊長じゃなかったんだ」、と気が付いて元に戻ったそうだ。

用事を済ませて、廊下に出て、息子はピーンと悪戯心が起きた。
しばらくして、今度はドンドンと歩き、同じ扉を隊長のように荒々しく開けた。
全員(5人)がスピーディに起立し、1人当番のものが「Achtung! 注意せよ」
と号令をかけ、全員隊長の顔を見ると・・・息子はニコリと笑い、だまって急いで扉を閉めたという。「あっあ~ またやられた、シゲル!」、と大きな声が扉の向こうでしていたそうだ。

8月は、3種類の武器の射撃訓練、ジョギングや体操、登山を繰り返して練習し、コンディションを整えたり、森や林、草原、川原、岩山などで、A地点からB地点まで、いかに敵に見付からないように、音を立てずに移動するかを学んだ。
また黒と緑のカラーを使い、お互い手伝って顔や手、耳、首の白い肌を隠すように塗ったり、周囲の風景の中に溶け込むようにヘルメットに木の枝や草を使い、カモフラージュの訓練もしたそうだ。数人がヘルメットにわざと沢山の花をつけて飾っていて、中隊長に怒られながら、花を少なくしていたそうだ。

森に入り、急な坂を上ったところで、「 それでは、俺を敵と思い、今までに教えた色々なテクニックを使って、俺に見付からないように近づいてみろ」との指令がでて、森の中で解散して20人の兵士は森に隠れた。

 数人は動いているのが見えたり、音で居場所が直ぐに見付かる。何人かは横から近づくが、音を立てたので、直ぐ気付かれてしまう。そして、同じように次から次へと見付かってしまう。

息子は、彼をを真ん中にして2人の仲間と、音を出さないように、1センチづつ移動するくらい慎重にジリジリと前進していたが、そこは急斜面だったので左の仲間はすべり落ちて見付かってしまった。頭の上の方に、長い草が沢山あったので、その草をヘルメットに苦労してつけた。

 草の間から、隊長を観察すると、0,5秒毎にこちらの方も見返るので、しばらく動かない事にした。本人曰く「岩の如く、忍者の如く、息を殺して地面にへばりついていた。ただ、しばらく動かなかった。」

 仲間が見付かり、隊長と話をしている間に、更に草に隠れて移動し、石を左のほうに投げて、そちらに隊長が気を取られている間に移動した。が、その時、もう1人の仲間が滑り落ちて見付かってしまう。もう一度大きな石を左の方に投げ、隊長が気を取られている間に、右の草の陰から隊長の後ろに静かにでると、隊長はものすごく驚き「気がつかなかった!」と不覚そうに言い、それで全員そろい、僕が最後だった。
 
 その後、1人づつコメントがあり、「木の葉っぱを裏返せば、白いだろう! お前らは自ら見付かり易くしている」とバカにされたようで、みんな苦笑。
色々な音を出した事も注意された。 「 ナガヤ、お前はヘルメットに長い草を付けたのか、もしかしたらと、思ったが、動かないので、その方向の事を全く忘れてたよ、 石を投げたのもうまかった。」と褒められたそうだ。
 その時すかさず、元東ドイツの仲間が「 君 本当に忍者みたいだなー」と
言ったので、みんながドッと、笑ったそうだ。

 「今までの人生で、僕はあまり褒められた事はなかったけど、今回ばかりは凄く褒められて素直に嬉しかった」と息子はしみじみと話した。
人は実に多面性があり、どんな子供も褒めて認めていかにドーパミンを出させ、成長させるかが、教育の本質的な仕事ではないかと考えた。   ( つづく )

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