ベルンハルト・シュリンクは1944年6月6日、ドイツ北部ノルトライン・ヴェストファーレンの町ビーレフェルトでハイデルベルグ大学の神学教授を父親として生まれ、幼少時代をハイデルベルグで過ごしたドイツ人作家である。
祖父は力学の教授、アカデミックで宗教心の強い家族だった。

ルプレヒト・カール・ハイデルベルグ大学や、ベルリン自由大学で法律を学び、卒業後はノルトライン・ヴェストファーレン州の憲法裁判所判事などを務め、1982年からラインのフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ボン大学法学部やフランクフルトのヴォルフガング・ゲーテ大学で教鞭を執る。
ベルリンのフンボルト大学で、国家法と法的哲学、国際法の比較などの講座を持っていた。

1987年 推理小説「ゼルプの裁き」で作家活動を始める。
1989年 ゴルディオスの結び目 でフリードリッヒ・グラウザ賞を獲得
1993年 ゼルプの欺瞞 でドイツ・ミステリー大賞を獲得する。
1995年 朗読者 を出版、彼自身の15歳の頃の体験や出来事を題材としたものだが、4つの賞を取る。この本はドイツ、アメリカでベストセラーとなり、39カ国語に翻訳もされている。(日本語版もでている。)
2000年 逃げてゆく愛
2001年 ゼルプの殺人
2006年 帰郷
2007年から、朗読者の小説の映画化が始まり、UKの監督「めぐり合う時間たち」で知られるスティーブン・ダルドリーによりベルリン、ゲルリッツ、ケルンで撮影された。最近この映画(ドイツ語では Der Vorleser) がミュンヘンでも公開され、色々と話題になっている。

主人公ミヒャエルが15歳の時、(この若者を演じた俳優がなかなか良い)偶然20歳年上の電車の車掌をしていたハンナ(タイタニックのヒロイン ケイト・ウインスレット)に出会い、お互い引かれあい逢引を重ねてゆく。毎回彼女は本の朗読をしてもらう事をミヒャエルに希望して、その時間を楽しんだ。
ある日、ハンナのアパートへ行くと、予告も無しに空になっていて、ハンナはどこかへ突然消えてしまう。
後に法学生として裁判の傍聴に教授達と出ると、なんとハンナがこの法廷で被告席に座っているのを見つけ、彼は衝撃を受け打ちのめされる。
ハンナは以前、ジーメンスの工場で働いた後、アウシュビッツでの監視人80人の1人として働き、指令を受けて6人の女性の監視人の1人として300人のユダヤ人を教会に閉じ込めて火を放ち全員を殺戮したという、ナチスの戦争犯罪裁判であり、物語は実にドラマチックに展開していく。

戦後のドイツの戦犯裁判と人権問題は、加害者が被害者でもあり、不完全な人間が作った不完全な法律で人を裁くという「いみじくも、ハンナは裁判官に貴方でしたらどうしましたかと聞くが、答えはなかった」、深刻な問題を提示し、戦争を引きずって生きる人間性を考えさせられる。

ハンナは、人並の基礎教育を受けていなく、文字の読み書きが出来なかったが、刑務所の中でミヒャエルが送り続けたカセットの朗読と本を合わせて独学で読み書きを学んでいく。このハンナの運命には胸が塞がれ、後に思い出しても目頭が熱くなり苦しくなる。同時にミヒャエルの理性の限界が悲しい。

現在ドイツには、15歳以上の文盲 (Analphabet ギリシャ語で無知な人)が約
400万人、6~6,3%いると推定され、ミュンヘンでは6万人とも言われている。毎年8万人の16歳位の若者が、基幹学校(4+6年)の卒業試験を合格していない。また、成人した大人では約0,6%、その羞恥心は強く、「眼鏡を忘れて今読めない」「手が痺れて書けない」などの理由で、なかなか分からない事が多いそうだ。偶然職場で、「アレ、変だ?」 と判明する事もあるという。

テレビでも呼びかけ、匿名で電話相談も受け付け、市民大学でも講座が設けられているが、2万人しか訪れていなく、読み書きが出来るまでには少なくとも1年以上と案外時間がかかるようだ。ドイツ政府は、その数字を半分にしようと約40億円の予算を組んでいる。

難読症(Legasthenie)-文字が知覚出来ないという障害もあり、知名人の中でもいるが、判明していないケースも多いと推定される。

世界の文盲率は、インド64%、中国32%、タイ・フィリピン20%、アメリカの海兵隊20%、ユニセフの発表では世界の7,8億人が文盲、1億人の子供が学校に行っていなく、2012年までに半分にしようと努力は為されている。

(ミュンヘン在住)ながやベックマンけいこ

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