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ドイツからもイタリアからも約100kmの距離、オーストリア・ザルツブルグ州の山中標高1002mに世界的に有名になった保養地バード・ガシュタインがある。
ヨーロッパの中では、此れほど興味深く意味の大きい場所は稀でもあり、またハプスブルグ時代の栄光の建築物がここにも残っている。

近くには、オーストリアの最高峰グロースグロックナー山3,798mが聳え、周囲はホーエ・タウエルン国立公園となり、ここの山岳道路は氷河とパノラマが素晴らしく、EU内でも車でこれだけの感動を得られるルートは他にはない。
この辺りの谷間では7000年前の初期石器時代の遺跡が見付かり、ガシュタインの名前は、紀元前400年西方から来たケルト人の由来とされる。
2000年前のローマ人の遺跡も残るが、その頃既に金や銀などのレアーメタルがこの地方で発掘されていた。

1327年美しい焼き物の水挿しが発堀され、バードガシュタインのシンボルとして市のワッペンに使われている。その頃、自然の温泉で病んでいる鹿がお湯につかり、元気になっていくのが見かけられ、1350年より医療用に温泉が作られて使用され始めている。この地域には現在も44~47℃の温水が出ている温泉場が18箇所ある。
16世紀には、ガシュタインの治療温泉の知名度は高くなり、宿泊所が大幅に不足した。16~17世紀の頃金と銀の鉱山業は頂点となり、1557年には800キロ以上の金が谷間で採掘された記録がある。
その後、ペスト,地震、火災、洪水が起き、鉱山業の廃業と重なり荒れたが、18世紀の後半から修復され始め、各国王侯貴族、政治家、芸術家など著名なる有名人が多く訪れるヨーロッパ最高の優雅な湯治場となった。

1938年、ザルツブルグ郊外イン川の畔ブラウエナーで生まれたヒットラーは、オーストリアをドイツに併合させた。1940年再び50以上の古い坑道で金鉱探しが始まる。しかし、これは残念ながら失望の中失敗に終わった。
ところが、ある坑道の奥深くで温度が41~44℃と高く、湿度が極めて高い場所(100%まで)が見付かり、ここで重労働をしていた鉱夫達が煩っていた慢性のリュウマチ性多発性関節炎の痛み、変形性関節症の痛み、喘息や肺・気管支炎、皮膚病などが驚く事に痛みが消えたり治癒してしまった。この奇跡とも言うべき出来事は別の発見“タウエルンの金”として話は直ぐに広まって行った。
1946年インスブル大学の教授達の調査により、坑道の空気中のラドンガス222が細胞の活性化を計り免疫を高める事が判明、1951~1952年から多くの難治性の病を持つ患者の治療に使われ大変有効である事が知られてきた。2001年にはオランダのマーストリヒト大学がコントロールされたラドンガス(通常2,4シーベルト/年間の100倍までの低線量)での高度な効果がある事を科学的に証明している。
現在は、オーストリアとドイツの保険も使える医学療法施設となり医師が居て、2~3週間の間に体調に合わせて10回位(ハイルシュトレン)治療坑道に入り、1回が約2時間になるが清潔なシーツを各自に渡され40分間位の岩盤温熱浴を行う。病気によっては寝台車もあり一度に120人位が水着をつけてトロッコ風の電車で坑道に入るが、温度と湿度が異なる5つのステーションがあり、蟻の巣のような坑道の中の部屋で、男女別の部屋にあるベットに横たわる事になる。
このクリニックの医師達は、筆者が紹介している正常分子整合栄養素も処方し、
訪れる患者の80%は、次の1年間は痛みが消え、薬も要らない状態になる。

ラドンは、ラジウムの壊変に際して放出されるので、ラジウムーエマナチオンと命名、後にラドンと改名された。希ガス元素の一で記号はRn、原子番号は86の放射性の気体である。
台湾の台北の郊外の北投温泉、日本の玉川温泉,三朝温泉,増富温泉もラドン効果がある事が知られるが、北投石は国の天然記念物となっている。
バードガシュタインの鉱石は、この北投石(2マイクロシーベルト)の約4倍の放射線量となり、世界一となるので、ハイルシュトレンでの効果も納得出来る。
具体的には、抗酸化酵素や代謝活性酵素を増やし活性酸素も抑え、各種ホルモンが増加し、ガン抑制遺伝子P53が活性化し、DNA破損の修復、細胞膜の過酸化脂質を減少させるなど体内で驚く革命が起きる。

1978年アメリカの生命化学の教授、ラッキー・D・トーマス博士がホルミシス効果の考えを発表した。生物に対して通常有害な作用をするものも、微量であれば逆に良い作用を示し、ホメオパシーと同一視するものである。ホルミシスとは、ホルモンと同じでギリシャ語に由来し“刺激する”と言う意味になる。
博士はNASAからの依頼研究では、宇宙飛行士が宇宙の放射線防壁を通して浴びる微量の放射線は健康に良いと言う学説を発表し、2005年には国際ホルミシス学会が出来ている。
「あきらめない放射線ホルミシス療法」の本では、バードガシュタインで40歳代のパーキンソン患者が歩けるようになった症例も紹介されている。予防医学としても、また直感力を持ち縁のある方には是非体験をお薦めしたい。

(ミュンヘン在住)ながやベックマンけいこ

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